九転十起女和花の気まぐれお仕事日記

前ブログ「九転び十起き」から引き続き、独身アラフィフ非正規社員の仕事にまつわるお話を中心に綴っていきます

早期退職

パナソニックで、1000人規模の早期退職を実施するそうです。
しかも勤務10年目の社員から。

この記事を読んで、まず思ったのが、あの超大手のパナソニックでさえも早期退職を募るんだ、と言うこと、そして勤務10年目の社員から募るんだ、と言うことです。
果たしてこの1000人のうち、会社が本当に辞めて欲しいと望んでいた社員はどの位いるのか、あと勤務10年目~15年目程度の若い社員がどの位いるのか。
とても気になる所です。

早期退職のメリットは、何と言っても退職金の割り増し。
ただ、それは次の転職先が決まっていれば、と言うこと。
例え他の企業より潤沢な退職金を貰ったとしても、次が決まっていなければ、そして仮に転職活動が長引けば、たちまちそれらは消えてしまいます。

恐らく次に働く企業では、給料はかなり下がってしまうのは避けられないと思われます。
そこをいかに妥協できるかが、ポイントだと思います。
給料よりもやり甲斐とか、仕事そのものを重視するのならそんなに問題はないかもしれません。
若ければ、挽回することも可能ですし、それよりも長く働けること、人間らしく働けることが肝心ならば、多分大丈夫でしょう。

ただ…やはりパナソニックと言う大きな会社で働いてきたプライドが邪魔をするようなら、かなり厳しくなると思います。
特に私たち50代のバブル期入社の方々は、その傾向が大きいのではないでしょうか。
そうなると、見栄ばかりが先行してしまい、思うように転職先が見つからず、それこそ退職金が生活費となり、家計を潤すどころか削られる事になってしまいます。

果たして1000人のうち、次の行き先が決まっている方々はどの位いるのでしょうか。
恐らく早期退職者には、就職先の斡旋もあると思いますが、実際早期退職の経験者によると、企業が雇った斡旋業はあまり信用できない、と言う意見がありました。
多分、自ら手を挙げて早期退職をされる方は、そのようなものに頼らず、きちんと自分で転職先を見つけ出しているでしょう。
良い人材は、喉から手が出る程求められていますからね。

あと、入社10年目位の社員と言うと、これから会社を担う事になる大切な人材であるはずなのに、敢えて早期退職の対象にしたことは、さすがに疑問に感じました。
普通早期退職は、早くて40歳位からかな、と言う気がします。
それにも関わらず、若い人材を平気で斬るパナソニック
この世代に何か問題があるのか、それともそこまでしないといけないほど切迫詰まっているのか。

この世代で早期退職を希望したのはどの位いるのかな?
多分、この世代で早期退職に応じた人の大半は、次を見つけていると思うのですが。
若い世代は、バブル世代や氷河期世代を見て育っています。
彼らをある意味反面教師としている世代とも言えます。
だから、何も後先考えず、パナソニックを退職するとはあまり考えられません。

あとは、社風や職場に馴染めなかった人もいるのかもしれません。
それならば、パナソニックで培った能力を他社で生かしたいと思うのも無理はないと思います。
この世代は、お金よりもやり甲斐とか自己実現のために早期退職する人が多いような気がします。

だとしたら、とても勿体ないなと思います。
だって、培ったノウハウが他社に流出していまうのですから。
家電業界はどこも苦しいようですし、30代の前途ある社員なら、引き手数多とまではいかなくても、それなりに需用はあると思うのです。
そして、パナソニックにとって、それは痛手になるはずなのですから。

早期退職のデメリットが、まさにそれ。
早期退職により、優秀な人材が他社に流れてしまうこと。
そして、本来退職して欲しい層が居残ってしまうこと。

と言っても、会社は意外としたたかで、本当に辞めて欲しい人間には、あの手この手で窮地に追い込み、退職させるように仕組んで行くのです。
私は、1番最初に正社員で働いた会社でその現実を目の当たりにしました。

バブル崩壊後、比較的社員の平均年齢が高かったその会社では、50代以上の社員が次々とリストラにより退職していきました。
まずは、一応面談のようなものを行います。しかし、皆定年まで働きたいので、拒否します。
すると、これまでとは畑違いの部署に異動されて、窓際に追いやります。
初めは、新しい部署で働けると単純に喜んでいた人たちは、実際異動して、ほとんど仕事を与えられず、1日を過ごすわけです。これでは余程神経の図太い人でないと、神経がやられます。
そして誰もが、消えるように辞めていきました。

その頃はまだ若かったのですが、会社って恐ろしいな、と思いました。
そして、この会社にはずっといる所ではないな、とも。
結局そこでは13年働きましたが、私が辞める頃までに、かなりの人がそのような形で辞めていきました。
中には定年間近の人もいました。
早期退職ならば退職金が上乗せされますが、恐らく退職金は支払われたかどうか。されても少なかったと思います。
ちなみに私は退職金を受け取りましたが、微々たるものでした(それでも今思うと貴重な収入源ですが)。所詮そんな会社だったのです。

だから、他の企業がそのような形で退職に追い込むのは、そんなに驚きません。
でも、それでは決して、会社そのものが良くなるとは思わないです。
現にこれまで、多くの企業が早期退職を募ってきましたが、それで良くなった会社ってあるのでしょうか??
良くて現状維持、ではないでしょうか。

現状維持でやっと、と言うことは、現実はかなり厳しいと思われます。
現状維持でも、それを保つのは本当に大変だと思います。現場で働いている人たちは、恐らくギリギリの状態だというのが想像出来ます。
新陳代謝が出来ている会社ならともかく、ほとんどがギリギリの人員、もしくは人手が不足した状態でしょうから。

さっきの話に戻りますが、以前いた会社でリストラにより大幅に人員が減らされ、私のいた部署では約半分に減りました。
それでも仕事量は変わりませんでした。
いる人たちで賄うしかないのですが、慣れないうちは本当に大変でした。
若かったから乗り切れたと思っています。

その時のような状態が、大手企業でも起きているのだろうな、と。
そう言う時って、割を食うのはいつも現場なんですよね。
現場の人間は、ロボットとでも思っているのでしょうかね。

パナソニックほどの大企業なら、1000人程度抜けた所で大して影響ないのかもしれませんが、それでも部門によってバラツキがあるでしょうし、抜けたら痛い部門で人が減っている可能性もあります。
そして、本当に辞めて欲しい人材がどの位辞める事になったのか。
残って欲しかった人材と、辞めて欲しかった人材、どちらが多く辞めることになったのでしょう。

パナソニックに限らず、昭和の高度成長を支えてきた家電業界、自動車業界など製造業の多くで、このような早期退職のニュースを耳にします。
確かに家電も自動車も、昔のように頑丈ではなく、すぐに買い替えることを前提に作られているような、脆弱な製造のものが多くなっています。これは、早期退職やリストラ等で優秀な人材が流出されているからではないでしょうか。あとは、長い間貢献してきた腕のあるベテラン社員を斬ったのもあるのかもしれません。

町工場や中小企業では、このようなベテラン社員が健在しています。
昔気質で口うるさい、厄介な社員かもしれませんが、仕事の腕だけは確か。
こう言う社員がいる会社は、意外と安泰なのかも知れません。
このようなベテランが、若い社員に手取り足取りノウハウを惜しまなく教えて、技術を伝える。
叱咤や厳しい指導も多いと思うけど、それは見込みがあると思うからなのです。

今このような指導をすると、ハラスメントと訴えられる事もあるみたいですが、日本の企業に1番足りないのはこれ。
昭和気質の、厳しいけど情のある職人のようなベテラン社員に、多少の叱責にもめげずに食らいつく若い有能な社員。
指導側は常に若手の顔色を伺いながら、最低限の無難な指導しかせず、若手は褒めて育てて貰うのが当たり前になってしまい、少しでも叱るとそれだけで意気消沈してしまう。

確かに暴力や理不尽な言いがかりなど、行き過ぎた行動は良くありませんが、多少の厳しさは必要だと思うのです。
そして、褒めて育てるだけではなく、叱られて育てる事も必要なのです。
それは、子育てにも同じごとが言えますよね。
今は皆自分のことだけで精一杯の甘ちゃんばかりで、だから企業も衰退する。
今はまだ、昭和気質の社員が辛うじて少し残っているけど、それもやがて天然記念物並みになる気がします。

何はともあれ、パナソニックが窮地に立っているのは間違いのない事実です。
松下幸之助さんが築かれた基盤は、どこへ行ったのやら。
かつての松下電器、ナショナル時代を知っている世代としては本当に悲しい現実ですね。